厚生労働省から平成27年度「過労死等の労災補償状況」の公表がありました。

業務における強い心理的負荷による精神障害(うつ病など)に関する労災状況の全体件数は、前年度から大きな変化はありませんでした(請求件数は1,515件で前年度比59件増、支給決定件数は472件で前年度比25件減)。

しかしながら、36項目の具体的な出来事を前年度と比較してみると、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」の支給決定件数が50件から75件に増加しており、前年度3番目から1番多い具体的な出来事になっていました。

「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」に関する心理的負荷の総合評価の視点は、
・業務の困難性、能力・経験と業務内容のギャップ等
・時間外労働、休日労働、業務の密度の変化の程度、仕事内容、責任の変化の程度等
です。

同じ業務における強い心理的負荷でも、パワハラや長時間勤務はその出来事がおきないようにどうするかを考えますが、

「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」のように、事業環境の変化に対応する出来事を回避するのは難しいです。

このような出来事は、

まず、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」は、労災認定になるくらいの強い心理的負荷であることを、会社も社員も理解すること。

次に、会社としては、社員のストレス耐性強化を期待するだけではなく、出来事の回避や軽減が難しい分、職場の『支援』を強化する取組みが重要だと思います。例えば、

・仕事内容・仕事量の(大きな)変化が生じたすぐは、新しい業務の難易度やボリュームを精度よく見積もるのは難しいので、上司などが妥当性を従来以上に詳細チェックするなど、業務計画の段階から支援する。

・仕事内容・仕事量の(大きな)変化が生じたすぐは、手戻りのリカバリなど長時間勤務になる危険性が高いので、人事労務スタッフは自宅勤務も含めて勤務実態を把握する支援をする。

・仕事内容・仕事量の(大きな)変化が生じたすぐは、不安や悩みも多いので、産業保健スタッフへの相談を義務付けることが有効な支援になる。

このような追加支援(変動支援)を日常支援(固定支援)に加えることで職場のストレス耐性が強化され、うつ病を未然防止できると良いですね。

ちなみに、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が、平成27年度の労災支給決定件数の2番目(60件)、前年度1番(69件)です。

「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」が、平成27年度の労災支給決定件数の3番目(36件)、前年度2番目(55件)です。

株式会社ストレスマネジメント実践研究所 北尾一郎
<うつ病のない日本の職場を目指して、プロジェクト成功と職場メンタルヘルスの両立に貢献します>

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